東京音大の菅有実子門下卒業生で、今はベルギーのブリュッセルの音楽アカデミーで教鞭を取られている中村明博さんが一時帰国されたので、
中目黒キャンパスをご案内しつつ、ベルギーのお話を伺いました。とても興味深いお話だったので、中村さんの了承を頂き、こちらに掲載します。
菅)中村さんはどんな経緯で、ベルギーの音楽学校で教鞭を取られるようになったのですか?
中村さん)私はずっとフランス語を学んで来たので、2011年に東京音大大学院を修了後、フランス語圏であるベルギーに渡って、ブリュッセル王立音楽院で声楽の教育学修士号を取得しました。
そんなある時、私がピアノを弾けることに着目した友人の薦めで、モンス王立音楽院でソルフェージュの教育学修士号も取得し、
今のAcadémie d'Uccle (ユックル区立音楽アカデミー、高等学校扱いの音楽学校です)に採用されました。
Formation Musicale (Solfège)のProfesseur 教授)として勤務しています。
菅)資格取得大変だったでしょうね。ところで週にどのくらいの勤務時間数で、何人くらいの生徒に教えているのですか?
中村さん)高校生以下及び成人以上を対象としてるので、基本的には放課後の勤務です。
週5日勤務していまして、月、火、木が16時から20時位、水曜が13時半から20時位、土曜日が午前中です。
受け持っている生徒は約200名です。土曜日には就学前の幼稚園児にあたる学年の子供たちの授業も担当しています。
菅)200人とはすごいですね。ソルフェージュを教えているとのことですが、教え方や学生の取り組み方は日本と違いますか?
中村さん)ベルギーはフランス式のソルフェージュなので、私が受けていたドイツ式や英語圏のソルフェージュとはスタイルが大分違うと
思います。両方の良い部分を採用するようにしています。ベルギーはフランス語圏ですので、フランス人の教材を用いることが多いです。
私が特に気を付けている点として、教材では作曲家の有名な作品を扱ったり、作曲家もしくは音楽作品、楽器について知る授業にも
重点を置いています。
幼稚園児にヴィエルヌのオルガン作品、小学生にマーラーの交響曲第八番等を聞かせたりしてますが、みんな真剣に聞いていますよ。
子供向けの作品、ということにこだわらないようにしています。
菅)なるほど、子供って大人が考えているよりずっと受け入れ能力があるのでしょうね。ところで、学生気質の違いというか「日本の生徒さんと違うなぁ」と感じることはありますか?
中村さん)生徒は主にヨーロッパ人ですが、皆自由ですね。彼らの持っているエネルギー、色彩感、特にイタリア人やスペイン人の話し言葉
の母音の明るさは、彼らの音楽性にも影響しているのではないでしょうか。彼らの話し方に接したお陰で私の声楽技術も上がったと思います。
菅)少なからずそういう影響はあるんでしょうね。ところで色彩感と言えば、そちらの国の一番美しい季節はいつですか?
中村さん)春ですね。花が咲き誇る季節です。太陽の柔らかい光が美しく、藤棚やバラとか綺麗ですよ。
菅)ベルギーって緯度的には札幌よりもだいぶ北ですし、「フランダースの犬」のイメージがあるのでとても寒い国のように思っていましたけど、
実際は想像よりもずっと温暖な気候なのですね。暖流の上を渡る偏西風のお陰でしょうか。ついでに伺っちゃいますが、中村さんが一番美味しいと思うお国料理は?
中村さん)ベルギーはフランス料理に影響を受けていますが、私が一番美味しいと思うベルギー料理はチキンのブラバント風です。キノコとクリームの
ソースが最高で、カリッと揚がったフライドポテトなどの一緒に食べるのが好きです。あと今の季節はジビエ。鴨肉や雉を頂くとベルギーにいるなぁと思います。そしてチョコレートはどの国にも負けません。
菅)チキンのブラバント地方風ですか、いかにも美味しそうな響きですね。ベルギーがスイスと並ぶチョコレートの本場であるということは、私も伺っていました。
中村さんからお話を伺っていると、遠い国のはずのベルギーが何だか近くになったような気がします。
今日は色々と興味深い貴重なお話をありがとうございました。